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観戦メモ 地域決勝 アルテリーヴォ和歌山vsFC今治

2015/11/10 11:38:00

前記事に続き、地域リーグ決勝大会の1次ラウンドC組2日目の試合からアルテリーヴォ和歌山vsFC今治のメモを残しておきます。和歌山は関西リーグ覇者で全社も優勝。今治は四国リーグ覇者。岡田武史氏がオーナーになりいろいろ注目されていますね。前日の阪南大クラブ戦はスカパーで生中継されました。今治の戦い方が特殊なので、割合的に今治に触れることの方が多くなってしまう点、ご了承ください。

写真

前の試合の雑感

・アルテリーヴォ和歌山 ●0-1サウルコス福井

前半は福井の2.亀井のロングスローに苦戦していましたが、とうとう失点につながってしまいその1点に泣きました。福井の守備への切り替えが早い影響もあり、ビルドアップ時やバイタルに侵入した際にボールを持ってから悩むシーンがありました。試合終盤に惜しいミドルがありましたが、あれをもっと早くやれていればなと。左サイドバックの4.鈴木翼(山形ユース卒,元山形)が攻撃参加した際はいくつか相手に脅威を与えていました。

・FC今治 ◯1-0阪南大クラブ

システム的には4-1-2-3になりますが、両ウイングは常に高い位置で相手サイドバックの外に張っている状態。サイドに張る選手はウイングだけに限らずインサイドハーフの選手だったり、サイドバックだったりします。サイドバックが上がる際はアンカーの2.山田卓也(元東京V,C大阪,横浜FC,鳥栖など)が最終ラインに入ります。ポゼッションスタイルでインサイドハーフ、サイドバック、ウイングでの細かいパス交換もあれば、2.山田や29.コロ(スペイン籍)がロングパスで裏を狙うケースもありました。逆サイド裏への意識はかなり強め。阪南大C戦のポイントは右サイドにありました。前半は7.下村和真(福知山成美高→大阪学院大卒)が右サイドにいましたが後半開始から24.森岡拓也(帝京第五高卒)とポジションチェンジ。すると24.森岡がペナ脇でボールを受ける機会が徐々に増えチャンスを演出するようになります。そんな中相手の阪南大Cが中盤左にいた7.山中を右に置き攻撃的な26.和田を投入。その数分後今治は右ウイングの24.森岡から22. 桑島昂平(徳島ユース→近畿大卒)を入れ、直後に勝利に導くゴールが生まれた点は見事でした。全体的には2.山田が攻守に活躍していましたね。

では和歌山(緑)vs今治(白)のスタメンとフォーメーション

フォーメーション

アルテリーヴォ和歌山-FC今治のフォーメーション

和歌山は442。若干入れ替えました。前回良かった4.鈴木がベンチからも漏れ5. 前山和磨(上野工高→吉備国際大卒)が左SBに入りました。ここは後ほど触れます。今治は大きく入れ替えてきました。負傷者も出ていたので最低2人は変えると思っていましたが驚きです。そしてシステムがよくわかりません(笑)3バックであること、アンカーが10. 岡本剛史(愛媛ユース卒,元愛媛)、インサイドハーフが3バックの横をケア、ウイング2人はサイドの高い位置に張り付いていて、トップ2人はどちらかが下がりながらプレーといった感じです。前の試合とコンセプトは同じですが配置が大きく変わりました。そしてこのやり方は完全に失敗で終わります。

試合開始。まずはフォーメーションをチェックしようと背番号と位置関係を見ているうちに和歌山が先制しました。反撃に出ないといけない今治ですが、最終ラインと中盤間のパスワークがひどく、和歌山に軽くプレッシャーをかけられただけで奪われる展開がしばらく続きます。

そして前半20分、左からのボールを今治DFが処理できずに転がっていき右サイド大外にいた10. 芝﨑純平(海南高→浜松大卒)に渡り、あっさりと加点。このタイミングか少し前からか、今治の布陣は下のように、20. 片岡爽(神戸ユース→筑波大卒)が左サイドバックに入る4バックに変更しました。

今治布陣変更

今治布陣変更

お互いにチャンスは得ますが、和歌山は442のブロックが良く今治の攻撃は限定的なものになります。7.下村と23. 乙部翔平(履正社高→関西学院大卒)が中央の高い位置でボールを受ける機会は少なく下がってサイド攻撃をフォロー。するとサイドからクロスを上げてもファーサイド以外に味方の選手が走り込めず、和歌山も対処しやすいといった状況でした。

ハーフタイムで和歌山は選手交代。11. 宮本宗弥(近代和歌山高→近畿大卒)から6. 中山喜裕(膳所高→大阪教育大卒,元FC大阪)へ。6.中山が左サイドハーフとなり、8. 白方淳也(愛媛ユース→関西大卒,元FC大阪)がFWとなります。これは初戦と同じ形。

後半13分、和歌山の9. 高瀬龍舞(作陽高卒,元FC大阪など)が一発レッドで退場。初戦の和歌山はサイドバックが高めに位置取りボランチの9.高瀬が配球する流れで結構キーマンだったのですが、この試合のポゼッションはほぼ今治で、大外を警戒する関係上サイドバックも低めとなり我慢する状況が続きました。9.高瀬は退場するすぐ前に繰り返しの違反から警告を受け、主審からも注意を受けていたところだったのですが、まさかの退場に。もともと流れは今治に来ていましたが、さらに優位になります。

さてここからは元日本代表の27. 市川大祐(元清水,甲府,水戸,藤枝)が輝き始めます。4バック移行後もそこまで上がる機会はなかったのですが、相手ががっつり引いて来たので高い位置でボールを受けられるようになります。一つ上のポジションにいる22.桑島は相手5.前山の厳しいマークにあい仕事ができない状態でしたが、市川が攻撃に絡むことでチャンスが生まれ始めました。そして後半23分、その市川のクロスに大外から走り込んだ20.片岡が決め1点差に。後半、市川が放ったクロスは正確無比。健在であることをアピールしてくれました。

ここからは最後まで攻める今治、守る和歌山という図。アディショナルタイムには今治がゴールネットを揺らしますがオフサイド。点差は変わることなくタイムアップとなりました。

和歌山からMVPを選ぶなら左サイドバックの5.前山です。相手の強みである22.桑島をしっかり抑えました。前の試合で今治の右サイドが危険であることを十分把握していたのでしょう。起用した監督もgood jobです。退場者を出してからは8. 白方のキープ力も光りました。あとスタンド中央付近でひたすら叫んでいたおじさんサポが忘れられません(笑)

今治はなぜこのスタメンと配置にしたのか疑問です。このシステムはどれくらい練習を積んでいるのか?10.岡本は中盤の底をやっている間、プレーとポジショニングにかなり迷いがありました。前線の配置については初戦の和歌山を見てサイドバックの裏とボランチ-センターバック間のスペースを突こうと思ったのかもしれませんが、和歌山がやり方を変えてきた上に試合開始直後の失点で、完全に混乱してしまいましたね。もろもろ変えた理由を知りたいところですが、宇都宮徹壱さんのコラムにも理由は明かされなかったとあるので謎のまま。同コラムの終盤「なぜ木村監督は“禁じ手”を使ったのか?」の部分はとても同意です。相手を舐めているのかと少々怒りを感じました。木村孝洋監督は今治で2012年と13年に地域決勝を経験しています。この時は1戦目から2戦目のところで大きなメンバー変更をしていません。阪南大C戦の後の岡田オーナーへのインタビューをスカパー中継で確認するとこれからの連戦に対して「監督がうまくローテーションしてくれる」と発しているので、上層部も含めスタッフ間でもともとメンバーを変える意向になったのでしょう。

おそらく今治は全員がサッカーのコンセプトを理解し、全員が多くのポジションをこなせるようトレーニングをしていると思います。ただこのサッカーはかなり技術とセンスが問われます。ボールコントロールだけでなく、空間の把握、予測、戦術理解といったところですね。今だと特に最終ラインがかなり不安です。この辺り岡田オーナーの影響度から技術のある選手を呼んでくるのか、今いる選手のスキルを上げていくのか、どういった課題の対処をするのかは注目ですね。あと、空中戦に関して完全に捨ててるのはアマチュアリーグを勝ち抜く上で結構難しいと思うのですが、どうされるのでしょうね。

この試合に勝った和歌山ですが、翌日阪南大クラブに0-3負け。このグループはおそらく試合順を入れ替えたり、単純にやり直してみるだけで全然違う順位表になるのではないかと思います。そんなあらゆる未来から選ばれた現実はサウルコス福井の首位突破でした。

2015 全国地域サッカーリーグ決勝大会

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