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ACL ここ10年の東アジア勢の成績傾向

2016/02/21 16:54:00

アジアナンバーワンのクラブチームを決めるAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)のグループステージが始まります。このオフ、特に目立ったのは中国勢の選手補強でしょう。これまでも中東のクラブなどで欧州で活躍したタレントを引き抜くことは多々ありましたが、それらの多くはキャリア終盤の選手でした。そういう意味では中国も前から似たような補強を行ってきましたが、今冬ではキャリアのピークにいる代表クラスの選手を補強しています。こういった事例はあまり記憶にないのですが、このことがACLにどのような影響を与えるのか。その最初のシーズンが今季となります。

まずは日本、韓国、中国のここ10年のグループステージの結果を年別にまとめました。表は横が年度、縦が順位で、何チームがその順位で終えたかを表しています。折れ線グラフはグループステージにおける平均得点、平均失点です。

グループステージ集計

グループステージ集計

この成績を読み解く前にレギュレーションの変化を知っておく必要があります。昔のACLは各国からの出場チーム数が少なく、現在でいうとプレーオフに出るようなチームが本大会に出場してきたりしていました。ガンバ大阪が15点取ったりした試合もありました。失礼ながらグループ内に1チームは格下がいる状況だったので、平均得点は高めになります(そのかわり昔はグループ首位のみがトーナメントへ行くルール)。レギュレーションが変わりさらにオーストラリアのチームもAFC所属となったことで徐々に勢力図が変わってきました。

その勢力図の変化により日本勢の成績が影響を受けています。06-11年ではありえなかったグループ最下位も増え、失点も増えてきました。韓国勢はほぼ安定していますね。以前から成長していると言われている中国勢ですが、近年は最低1チーム必ず首位で終えています。ただグループステージ敗退チームは引き続き多く、結局のところ「広州恒大だけ」という印象を受けています。昨年までは。

次のデータはグループステージの節別の平均勝ち点です。06-10年の集計と11-15年の集計に分けました。

節別平均勝点

節別平均勝点

記憶に新しい昨季もそうでしたが日本勢はスロースタートな成績となっています。序盤あまり勝てず、4月くらいで上がってくる感じでしょうか。最近のACLの第1節はまだリーグが開幕していない状況で始まるのでコンディションが整っていないのはしょうがないとも言えますが、それは他国も同じ。韓国や中国のトップリーグはJ1よりチーム数が少なく、リーグ開幕もだいたい1週遅れのようです。なのでリーグに向けた調整という意味では日本の方が有利なはずなのですが…。逆に中国勢は序盤強いのに途中で失速しています。グループステージの中盤は突破チームを決める上で試合の重要度が高まるタイミングだと思いますが、この辺りの勝負強さの違いかもしれませんね。

日本、韓国、中国勢の対戦成績にも変化がありました。まず06-10年の集計から。

対戦成績06-10年

対戦成績06-10年

この頃の日本勢はどちらにも勝ち越していました。が次の11-15年では

対戦成績11-15年

対戦成績11-15年

どちらもわずかな差ですが負け越しに。ちなみに中国勢の18敗中10敗は広州恒大戦です。こう見ると中国勢の全体の成績はもっと上でもいいかと思うのですが、どうやら中国勢はオーストラリアやタイ勢に弱いようです。

次にゴールの外国人選手比率を出してみました。06-10年と11-15年に分け、各国のACL全試合から抽出しています。

外国人選手のゴール

外国人選手のゴール

06-10年は3カ国とも似たような数値。3ゴールにつき1ゴールが外国人といったところでしょうか。これが11-15年になると大きく分かれました。日本勢の外国人ゴール比率は減少。J1自体の傾向でもありますが、得点ランキング上位から外国人選手の名前が減っていますよね。韓国勢はそれほど変わっていませんが、中国勢のゴールは半分以上が外国人選手のものになりました。今季はもっと増えてしまうかもしれませんね。

これに関してはどちらがいいという明確な答えはないです。日本人選手がゴールを取りまくって日本勢が強い、という状況が一番いいのでしょうけど、単に勝負の世界で勝つことを目的としているのであれば、弱点であるポジションにふさわしい外国人選手を呼び活躍してもらうのがベストでしょう。ちなみにここ10年のACLのゴールを国籍別に見ると最も多いのがブラジル人選手でした。近年ブラジル人選手の存在感が薄くなっているサッカー界ですが、アジアではまだまだ健在のようです。

さて最後に今季の話。グループ分けをおさらいしましょう。

■Group E
* 全北現代(韓国)
* 江蘇蘇寧(中国)
* ビンズオン(ベトナム)
* FC東京(日本)

思わぬ大勝でプレーオフを勝ち上がったFC東京は、全北(Away)、ビンズオン(Home)、江蘇(Home)の順でまず戦います。江蘇は昨季の国内カップ戦覇者で、ジョー、アレックス・テイシェイラ、ラミレスを獲得したチームです。アジアでの経験値だけで言えば、初戦のアウェイ全北戦が最も難関となるでしょう。ここで勝ち点を持ち帰り、次の試合で勝ち点3を上積みする、という状況で江蘇戦を迎えたいですね。

■Group F
* サンフレッチェ広島(日本)
* FCソウル(韓国)
* ブリーラム(タイ)
* 山東魯能(中国)

日本ではここ数年で最強チームとなった広島ですが、アジアの舞台では大きなインパクトを残せていません。そんな中、昨年の終わりに戦ったクラブW杯は大きな収穫となったはず。今年こそ日本最強チームとしてアジアを勝ち上がってもらいたいところです。広島は山東(Home)、ソウル(Away)、ブリーラム(Home)の順でグループ前半戦を行います。ソウルには高萩が所属。ブリーラムには元C大阪、横浜FCのカイオが加入しました。山東はかつてブラジル代表を率いたマノ・メネゼスが監督に就任。外国人選手もビッグネームというよりはブラジル国内リーグ戦で活躍した選手が多いです。(ジエゴタルデッリ、ジウ、アルゼンチン人のモンティージョなど)

■Group G
* メルボルンビクトリー(オーストラリア)
* ガンバ大阪(日本)
* 水原三星(韓国)
* 上海上港(中国)

昨季最も上位で終えたG大阪はまず水原(Away)、メルボルン(Home)、上海(Away)の順で戦います。ここも含めどこも厳しいグループなんですが、G大阪のグループ突破が一番安泰かなと信じています。戦力とグループ内の経験値の差的に。上海上港は初めてのACLなのですが、外国人選手に広州恒大にいたエウケソンとコンカ、アルアインにいたアサモアー・ギャンが所属しています。SoccerD.B.では2006年からACLの出場記録を扱っていますが、ギャンが通算18点、エウケソンが15点、コンカが14点となっています。3人でなんとかして的サッカーができてしまうので、彼らをどう抑えるかがポイントになるでしょう。

■Group H
* 広州恒大(中国)
* シドニーFC(オーストラリア)
* 浦和レッズ(日本)
* 浦項スティーラース(韓国)

浦和はシドニー(Home)、浦項(Away)、広州(Away)の順で戦っていきます。2007年にACLを制覇した浦和ですが、それ以降グループステージを突破したことはありません。(2008年は前年チャンピオンはトーナメントから登場するルールでした。)今一度、挑戦者として相手をリスペクトし研究してアジアで戦ってもらいたいところです。で、キーマンは監督にあると思っています。ミハイロ・ペトロビッチ(以下ミシャ)にとって4回目となるACLですが、広島時代も含めグループステージを突破したことがありません。過去3度の成績を見ると、とにかく失点が多い点が気になります。

ミシャのACL成績

ミシャのACL

失点以上に得点が取れていれば勝つ上では一応問題はないのですが、昨季に関しては得点力すら発揮できませんでした。ここを改善するには自身のACLへ取り組み方を変えてもらうしかないと思っています。厳しいグループですがここへの改善の兆しが今季も見えなければ、ミシャではアジアは戦えないでしょう。

中国勢の爆買いによりまた勢力図が変わりそうな気配を漂わせていますが、まだ試合は何も始まっていません。あれだけのお金と選手が動いたわけで、全てが成功することはないでしょう。おそらく一部では給料未払いやチーム内トラブルも起こると思っています。また、中国勢は相変わらず退場が多く2年連続で国別の退場数1位となっています。ここもそう簡単には改善しないでしょう。日本は日本らしく、冷静に、相手をリスペクトし、そして勝利を掴んでもらいたいと思います。

AFC チャンピオンズリーグ
2006年からのデータを扱っています。

ACL 2006年以降の国別成績集計ページ

ACL 2006年以降の通算得点ランキング

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