CLにおけるバルセロナのデータのまとめ(12-13から15-16まで)
最近のブログの流れから一転して今回はバルセロナのデータのお話。近年海外リーグの公式サイトに掲載されるデータの量はどんどん増えていて、特にドイツのブンデスリーガはその先頭を走っていると思いますが、それ以前、公式サイトのデータ量という意味で最先端だったのはuefa.comでした。EURO2004では大会公式サイトとしては初めてパス数、クロス数といったプレーのデータを掲載し、EURO2008からは走行距離も掲載されるようになりました。走行距離はそのちょっと前から欧州CLでもテレビ中継などで使われていましたね。uefa.comのありがたい点は主要大会のデータをPDFで公開している点です。
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多少のマイナーチェンジは行われていますが、毎年ほぼ同じフォーマットでデータを公開してくれているので、扱う側としては大変ありがたいです。今回のバルサのデータ記事は公式にあるものをひたすら集計し作りました。どのチームでも良かったのですが、多くのサッカーファンにとって分かりやすく、個人的にもどういったデータが表れるか興味があったのでバルサを選びました。
まずは基本的なスタッツをまとめてみました。
基本スタッツ
やはり変化があったのは14-15シーズンから。ルイスエンリケ監督の就任とMSN(メッシ、スアレス、ネイマールの3トップ)の誕生による影響でしょう。ただでさえ多いシュートとゴールはさらに増加(①)。UEFAのレポートではパスを3種類(Long,Medium,Short)に分けていて、それぞれの数、成功数、成功率と、全体のパス数に対する割合(比率)を出してみました。この3種類のパスを具体的にどう分けているのかは不明ですが、Mediumの範囲は広そうなのでLongかそれ以外かという見方をした方が無難そうです。そして、このLongの比率や成功率が14-15以降上がっています(②)。
UEFAのレポートにはボール支配率とともにボールの支配時間も載せています。よって(③)の支配時間÷パスというのはパス1本当たりの時間(秒)となります。この数値が大きい場合はボールキープの時間が長い、パスの距離が長い、パススピードが遅いなどが考えられます。そして14-15以降のバルサはこの数値が上昇。やはりポゼッションのスタイルが少し変わったようです。
15-16のオフサイドの増加はスアレスの影響でした。これもまた攻撃の変化の一つですね。縦パス1本にスアレスが飛び出すシーンは幾度も見ました。
次に、最初に挙げたシュートの部分をもう少し砕いてみました。
シュートランキング
13-14まではイニエスタやシャビもフィニッシュに絡んでいましたが、14-15からは3トップが中心になり、MF陣のシュート割合は減少。サイドバックのシュート減も気になりますね。あの3トップなので彼らに託したいのは分かりますが、サイドバックがシュートに絡むというパターンを混ぜることで相手の守備の目線を変えさせ、よりアタッカーが生きるケースもあります。
次にアンカーを務めるブスケツのパスについてまとめてみました。ブスケツから誰にパスを送ったかと長距離パスの比率、成功率の数値です。
ブスケツのパス
シャビがいた頃は5本に1本のペースでシャビに渡していました。そして送り手の2番手はイニエスタ。これが14-15からは変わって1番手がCBのマスチェラーノ、2番手がメッシとなりました。かつてのブスケツは短いパスの印象がある選手でしたが、今は長距離パスも増え成功率も上がっています。15-16ではブスケツからネイマールへ送る数値も増加。無理せず下げるか前へ送るかという選択になっていますね。ただ○○から○○へのパス数というデータはお互いが出場していることで生まれる数値です。バルサの交代パターンとして、かつてはイニエスタやシャビが変わるケースは少なかったですが、今は3トップを代えられないのでラキティッチやイニエスタが交代対象となっています。彼らへの割合が少なくなったのはこういった影響もあります。
最後に各シーズンから象徴的な試合のデータを紹介します。長くなるので13-14はカットしますが…。パスの組み合わせトップ5は同数の場合すべて入れています。
12-13ミラン戦
バルセロナvsアッレグリはいつも良いゲームになることが多いのですが、ここではバルサが完勝。中盤の逆三角形+メッシのパス交換が目立ち、この時のバルサの象徴とも言えます。
その試合から約1ヶ月後。バイエルンに歴史的な敗北を喫します。
12-13バイエルン戦
なんとシュート4本。この試合は本当に衝撃的でした。メッシにボールを送ることはできるもののその先がないという状況。パス成功率は先ほどのミラン戦より高いのですが、セーフティなパスしかできなかったということでしょう。
2年後この両者は再会しました。
14-15バイエルン戦
バルサといえば常に相手を上回る支配率を記録していましたが、この試合では46.6%。リーガですでに相手が支配率で上回った試合はありましたがCLでは久しくなかったと思います。しかし試合結果は完勝。サイドバックからウイングへというシンプルな攻め方が分かりやすく見えています。
15-16からはまずアーセナル戦を選びました。この試合のパスも分かりやすいですね。交代がない試合だったのでイニエスタやラキティッチにパスが向いてもおかしくないのですが、結果としてはこうなりました。
15-16アーセナル戦
15-16アトレティコ戦
しかし今度はアトレティコマドリーという壁に当たりました。支配率は70%を超えるものでしたがほとんどは後方でのパス。シュートは打てていますがゴールには至りませんでした。メッシは途中から中央に下がってプレーし始めたので若干パス数が増えましたが、支配率の割に3トップのパス数が少なく手詰まり感があります。
パスのルートというのは相手の守備の仕方にも大きく関わる話なので、取り上げた試合がそのシーズンのすべてではないのですが、やっぱり変わったなぁというのがデータでも出たなという感想です。
ここ10年世界のサッカーの先端を走ってきたバルサですが今後どうなるのか。MSNの3選手はまだまだ年齢的にも良いパフォーマンスを見せてくれるでしょうが、彼らへの偏りが大きくなると対策はしやすくなってくるでしょう。右サイドバックのダニエウ・アウベスのところはテコ入れしないといけないところ。そして近い将来にはイニエスタ、マスチェラーノ当たりのバックアップも気になります。
また別のチームでもこういったデータのまとめが出来ればなぁと思っています。では。