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観戦メモ 天皇杯予選 福島ユナイテッドvsいわきFC

2016/08/22 19:07:00

各地で天皇杯都道府県大会の決勝が行われましたが、その中から福島県の試合を選びました。対戦カードは福島ユナイテッドvsいわきFC@あいづ陸上競技場。

この試合での個人的な注目点ですが、まずいわきFCは初観戦なのでサッカーの内容や雰囲気がどんな感じなのかを知ること。ここまでの福島県大会はすべて快勝。それだけならまだしも社会人選手権の東北予選ではPK戦もありましたが現東北リーグのチームに勝ったのは驚きでした。いわきの今季最大の目標は社会人選手権(以下、全社)とその先になるでしょうが、この天皇杯で現J3の福島ユナイテッドを相手にどういった試合をするのか興味深いです。

一方の福島ユナイテッドはこの試合に対しどういう準備を行い、どういったモチベーションで臨むのかが気になります。Jリーグを優先すると考えても試合間隔的にはメンバーはそのまま行けますし、全社の予選は福島県の相馬で行われていましたから、いわきのサッカーを事前に研究することもやろうと思えばできる状況ではありました(対戦相手がいわきに決まったのは全社予選の前)。福島ユナイテッド的にこの試合にどういった意味があるのか、それはチームの中に入らないと分かりませんが、観戦者としてもどう見えるか気になったので、ここまで来てみました。福島ユナイテッドの現地観戦は昨年以来3回目です。

スタメンとフォーメーションは以下の通り。

フォーメーション

フォーメーション

この中から福島でリーグ戦のスタメンが少ないのはGK内藤、DF酒井、MF村岡、FW金辺りでしょうか。となると右サイドが気になるところ。いわきはGKを除き全社東北予選の代表決定戦コバルトーレ女川戦と同じスタメンでした。

序盤はいわきペース。所属カテゴリーは大きく違いますが怖じ気ることなく堂々たるプレーぶり。いわきFCのピーター・ハウストラ監督は広島でのプレー経験があり、母国オランダのフローニンヘンなどで監督歴がありますが、まさに10年前のエールディビジを思い出すような感覚になりました。サイドの突破力に長けており、両サイドペナ脇からクロスというシーンを序盤だけで各サイドで2回演出。左サイドは単独ドリブル突破から、右サイドはコンビネーションからクロスを放ちました。7.片山紳のドリブルに対し17.酒井高聖は手こずっていましたね。サイド攻撃以外でも中央でチャンスと見てはロングシュートでゴールを狙うのもまた古きオランダ感がありました。

福島はボールを奪ってもその後がつながらない状況が多かったのですが、2回目くらいのチャンスで右サイドからのクロスを11.金弘淵が頭で合わせ先制します。

その後はお互いにチャンスを創出。福島15.村岡拓哉のロングスローはいいですね。最近ペナ内まで飛ばすケースは増えてきましたが、ライナー性のボールを投げる人はまだ少ないので、ああいうボールの方が守る方は怖いのでいい武器だと思います。

後半開始タイミングでも双方のやることは変わらず。いわきは右サイド後方から長いスルーパスを放ち26.平岡将豪を走らせクロスを放つシーンが確か2回あったと思いますがゴールには届かず。いわきはちょっと攻めが単調ですね。セットプレー以外だとペナ脇サイドからのクロスがほとんどで、一回右SB28.佐藤令治が中へ攻め上がって、右サイドからのショートパスをペナエリアギリギリの中央で受けてシュートを放ったシーンが前半にあったのですが、意外性のある攻撃はあれくらいだったかなと。クロスのターゲットである9.菊池将太に対しては福島の4.戸川健太がよくマークできていたのでハイボール攻撃は少々手詰まりになっていました。

後半の福島の攻撃は奪ってからのカウンターによるチャンスがいっぱいあったのですが、最後の精度が悪く入らない時間が続きます。福島のJ3におけるデータの一つに先制時の勝率の低さがあります。実は先制した試合数は大分と同じ13試合なのですが、福島が先制し勝った試合は4試合だけ。多くの勝ち点を落としてきたと言えます。なのでこの追加点が取れない状況は、もう福島側からすれば嫌な予感しかしない状況でした。

晴天から徐々に暗い雲が現れ始めた頃にその予感は現実化します。後半のクーリングブレイクの後、いわきはCBの3.高野次郎を前線に上げ、最終ラインに20.山崎大成が入り4-4-2になります。それでもハイボールによる攻撃に関してはそこまで脅威ではなかったのですが、終盤左サイドのスローインからショートパスでつなぎペナ中央にいた3.高野にいいボールが入りDFを交わしゴール。先ほどいわきの攻撃が単調と書きましたが、ちょっと違う攻め方がハマった得点でした。同点に追い付いたところで3.高野は最終ラインに戻り、元の陣形に戻しました。

試合は延長へ。だいぶ涼しい風も吹くようになりましたが、何せ14時キックオフでしたから疲労の色も出てきてオープンな展開に。そしてスコアが動きます。右サイド深くラインを割る寸前のところで17.酒井がクロスを上げ、ファーサイドにいた途中出場の40.樋口寛規のヘディングシュートがゴールに吸い込まれ福島が勝ち越し。思えば福島の2点は両方ともペナ脇サイドからのクロスを合わせたもので、いわきが一番やりたかった攻めですね。いわきの守備は失点シーンに限らずマークが甘い時があったので、ここは後々課題を克服する必要があると思います。

守勢に入った福島ですがいわきのサイド攻撃に遅れをとり、CKも含めしばらく攻め込まれましたがGK34.内藤友康がここは頑張りました。出場機会がなかったのでどうなるかと思いましたが内藤は最後まで安定していましたね。苦しい時間での彼のセービングは福島の大きな力になったことでしょう。

失点後再び3.高野を前線に上げたいわきに対し、福島は空中戦が強い23.パウロンを投入。ここでいわきは7.片山に代わって入った10.下重優貴が中寄りにポジションを取って、パウロンの裏を狙ったり空中戦のこぼれ球を拾うような役目を担わせるようになりました。そういう変化をもうちょっと前から欲しかったところです。両ウイングとも突破力があるのにカットインしてシュートを打つ場面すら少なかったので。

このまま試合終了。2-1で福島が勝利を収め、天皇杯本大会への切符を手に入れました。福島は危ういところもありましたが、これまで出場機会が少なかった選手が大きく勝利に貢献してくれたのは大きなプラスでしょう。試合前に自分が気にしていたネガティブな部分の露出はなく、いい試合を見せてくれました。ただ90分のスコアでいえば先制したけど追い付かれて1-1という展開だったので、リーグ戦の課題でもある追加点への道筋の部分は対処しなければいけません。

いわきFCですが、東北リーグのチームを破るのも納得の内容でした。福島がバテてる中でもいわきはそこまで運動量が落ちることなく走っていました。いいトレーニングができてそうですね。これは全社での連戦で生きるでしょう。県2部のチームとしては上等過ぎる出来ではあるのですが、今後さらに上を目指すならもう少し戦い方の引き出しを増やす必要は感じますし、それができるチームだと思っています。近年、日本でここまでオランダ化したチームはほぼないと思いますので、とても新鮮でした。またどこかで成長した姿を見に行きたいと思います。

福島県には何度か来たことがありますが、今回は時間があったので喜多方ラーメンを食べたり鶴ヶ城へ行ったり観光させて頂きました。

ただ一つ、いわきFCにサポーターとして加入した武田玲奈さんが来場していたにも関わらずまったく目にすることができなかった自分の視野の狭さと状況判断の不足については自身の課題として受け止め、改善に努めたいと思います。

福島ユナイテッド

いわきFCの出場記録データなどは いわきFC.DB@wiki さんのサイトがお薦めです。

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