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Jリーグ金曜開催導入のメリット、デメリットを考える〜平日開催時の観客数下落率など

2017/11/15 15:08:00

DAZN側からJリーグの金曜開催の要望があったという記事を目にしましたので、今回これについて考えてみました。自分は2000年代はがっつりテレビ中継を見るタイプだったのですが、2010年以降から現地観戦が増えてきたもので、どちらの意見も頭にあってこの件に関しては五分五分です。00年代の考え方なら間違いなく中継はズラしてほしいですし、本来現地に行きたいようなカードが金曜開催に組まれたらためらうでしょう。ということで、中継側とリーグ側、そして主にテレビ中継を楽しむタイプと主に現地で見るタイプの両方の視点から見ていきたいと思います。

まず前者ですが、スカパー時代終盤はまずJ1かJ2かで曜日が分散され、且つ試合開始時間も夏や終盤を除いては分散される傾向がありました。DAZN元年である今季はテレビのチャンネルという枠がなくなったことで、各チームが好きなタイミング(もちろん季節や会場の都合はありますが)で試合開始時間を設定できるようになったことは今季開幕前でも報じられていました。実際、ここ数年とは試合開始時間の設定方法は変わったなと思えるものでしたが一方で、注目の対戦カードが同じ時間に被ってしまうということも多々ありました。「Jリーグを中継している時間」でいえば以前より減っていると思います。

放映権収入が大きい欧州の主要なリーグでは多くの試合開始タイミングを設定することでリーグ中継時間を増やし、視聴者に多くの試合のライブを楽しめるよう変わりました。土日の前後である金曜日や月曜日の夜に試合を行うことも日常となりましたね。DAZNとしてもこの流れに乗りたいのでしょう。これによりDAZNの生中継をやっている時間とJリーグの中継時間を増やすことができます。

この提案に対しリーグ側やチーム側は平日開催による観客数の減少が大きなハードルとなるでしょう。ここ10年間のリーグ戦において、土日祝日開催と平日開催でどれくらい観客数は減るのか、来季J1で戦う可能性があるチームのみ下表にまとめました。

土日祝日と平日の観客数と現象割合

土日祝日と平日の観客数と現象割合

平日開催の多くは水曜日というケースが多く、水曜と金曜では翌日が休日かどうかという違いもあるので傾向は異なると思うのですが、金曜開催はデータサンプルが少ないので分析が難しい状況です。最近になってACL出場チームが日程を考慮し金曜に開催される試合が増えましたが、それ以外での金曜開催はかなり少ないため、平日全体を中心にまとめています。%は土日祝日の平均観客数に対して平日(もしくは金曜)の平均観客数がどれくらい減ったかの割合です。

全体的には関東の一部のクラブを除いては東日本より西日本の方が平日は観客数が少ない傾向にあります。そして関東はそこまで減らないチームと減るチームで大きく分かれていますね。休日の観客数の数値が大きければどうしても差分が出やすくなるという理由もありますが、これだけではないように思えます。

例えば休日から48.5%観客数が減る鹿島の場合は、東京から観に行っているサポーターの方も多いと思いますが、平日の仕事終わりに東京からバスに乗って鹿島に行くのは正直結構しんどいと思います。帰りもかなり遅い時間になりますね。こうなると平日開催の観客数は上がりにくくなってしまいます。

東京都内でいえば他のスポーツなら東京ドームや神宮、秩父宮、代々木体育館辺りは都心で働いている人にとっては行きやすいでしょう。ただJリーグのスタジアムは郊外が多く、例えば平日の夜に味の素スタジアムへ行こうと思った場合、スタジアムへ行く際に帰宅ラッシュに飲み込まれます。スタジアム近辺に住んでいる人はいいのですが、都内でも他の路線の方はなかなかのハードルです。単に「駅から近い」だけで語れないのが平日開催のスタジアムアクセスの難しいところで、サポーターの生活圏・勤務地(通学場所)・スタジアム立地の3つの関係がより強く影響します。

あと根本的に日本は仕事しすぎなので、「仕事終わらないので行けない」という方も多いと思います。こうなってくると社会問題の話になってくるのですが、キックオフ時間を後ろにすればスタジアムによっては騒音の問題もあるので難しいですね。

金曜の夜は他のスポーツもありますし、飲みに行かれる方も多いでしょう。そういう意味では土日と同様に「他に試合をやっていないから見てもらえる」というわけにもいかないと思います。金曜開催は多くても1、2試合程度でしょうから、中継スタッフもこの試合に注力できるかと思いますので、先進的な技術を活用するなど他のエンターテイメントと対抗できるようリッチな中継を実験していくような場になれば、今後につながるかもしれません。それでもお客さんが入っていなければ中継の見栄えも落ちるので、金曜開催時はバックスタンドやゴール裏のチケットを安くして、その分の費用をリーグ側が補填するような枠組みができれば、多少は課題のクリアにつながるかなと思います。

どちらにしろ、単に金曜開催を用意するという点だけに終わらず、Jリーグというエンターテイメントの発展に向けたデータ収集と実験を行い未来につながるようなものになるのであれば、やる意味はあると思っています。

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