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タグ付け(タギング)型データ取得のメリットと課題

2018/11/26 18:43:22

サッカーにおけるデータといえば、ライトなものだと記録系(スコア、出場選手など)から始まり、パスなどのプレーに関するデータや、走行距離のようなトラッキング・GPSデータというように深くなっていきます。簡単な記録系のものは公式が古くから取り扱い、個人でも交代やカード、シュートを記録していく作業はさほど難しくありませんが、データが深くなると個人では扱いが難しくなりますので、どこかしらのデータ会社が取得し、その会社と契約を結んで公式だったりメディアに載るといった流れが通例でした。しかし、デバイスの進化やネットワークの高速化により映像の取り扱いが容易になり、モバイルのアプリケーションでも動画を見ながらタグを付けることで、タグの箇所と映像がリンクしたり、タグの数をカウントすることでデータとして集計しグラフ化できるようになり、映像を伴った形で細かいデータを取得できるようになりました。どういったデータを記録するか、入力を行う画面をどういった構成にするかという部分までそのアプリケーションで作れるようです。この記事ではそういったサービスの紹介や自作中のものを紹介し、どういったメリットや課題があるのかについてまとめました。

SPORTSCODE

http://sportscode.jp/products/sportscode/
Hudl社の製品「スポーツコード」はこれらの中でも古くから有名で、世界中でサービスが展開されています。初めて名前を聞いたのは10年くらい前でした。対応デバイスがMac中心になりますが、その分高機能なのでしょう。使用ユーザーはプロリーグレベルのチームや大学が多く、SNSなどで見る限り個人で使われているケースはほぼ見かけませんね。

福島県のいわきFCがスポーツコードを使用されているようで、自チームの試合配信時に社長自ら紹介していました。またこちらの動画でも実際に取得したデータが紹介されています。(限定公開とあるので見れなくなったらすみません)

ほか、データ取得だけに特化したCodaというアプリもあり、こちらはiOSデバイスでも利用可能です。

DARTFISH

http://www.dartfish.co.jp/my_dartfish/
Dartfishはスマートフォンが一般的になってから知ったのですが、こちらも歴史は古いようで00年代前半にはあったようです。Dartfishはアプリがいくつか展開されていたので少し使ったことがあります。結局フリー版(タグ打ちのみ)だとやりたいことができなかったので使っていませんが、タグ付け作業が向いているか向いていないかを確認するという意味ではフリー版で試してみるのはありだと思いますね。

Dartfishは画像、動画解析に長けており、最近出た高価版は選手の動きに沿ってラインが表示されたり、スピードが表示されたりできるようです。ライトな層からコア層まで幅広くターゲットにしているようですね。

SPLYZA

https://products.splyza.com/teams/
元々はSpochという名前で展開していまして、正直なところ上記のサービスほど目立っていなかったのですが、サービス名称変更後から戦略が変わったのか、その名前をよく見かけるようになりました。Twitter上だと多くのフォロワーを抱えるGIUBILOMARIO氏の加入が大きいように思います。体験期間を長めに用意し、チーム関係者以外の戦術解析系ブロガーやeSports選手など、新しい顧客層を取り込もうとしていますね。

他のサービスを見るとこちらの会社も動作系の解析をやっているので、今後球技にも生かされるかもしれません。

自作版

自分の方でも試合の中身のデータ取得を1年前から考えておりDartfishを試用したのですが、自分で作った方が早いし勉強になるという結論になり制作中です。ウェブブラウザベースで作ってます。下図が入力画面です。

データ入力画面

自分の場合は第一に試合のデータをグラフィカル表現したいと思っているので、ボールのあるエリアを記録することに重点を置きました。映像のない試合でも現地で取りたいと思っているので、入力はリアルタイム一本勝負(恐怖)。インプレー中に「悩む」という行為が発生すると追い付けなくなるので、選手の判別やプレーの判別はほぼ行わず、チーム、時間、エリアの取得をただひたすら行う感じです。データのアウトプットがまだできていないのですが、以下のような図は入れる予定。昨年、地域チャンピオンズリーグ(女川vs宮崎)を観に行った際に現地でテスト入力しました。女川の前半のポゼッションのルートを矢印を使ってグラフィック化したものです。数値はエリア別のポゼッションの時間です。

データ出力イメージ

今のところ自分のバージョンでは映像とのリンクは考えていませんが、映像とインプットしたタグをつなげるという作業はそこまで難しいものではないです。Youtubeで公式が配信したJリーグユースカップの決勝から3シーン選べるフォームを下にざっくり作ってみました。コーナーキックというデータを取得する際に映像開始からの時間のデータも同時に取得しておけばこのようにリンクさせ、すぐ映像再生することができます。(ブラウザによってはボタンを押した後、動画内のタップも必要です)

メリット

以上3社のサービス+自作版を簡単に紹介しましたが、こういったサービスの良い点は手軽に映像と紐付けたデータを作れるというところです。例えば1試合を見終わった後に自分の中で良かったと思うシーンや悪かったと思うシーンは必ずあると思います。ただ記憶というのは曖昧なものなので、試合が終わった後に記憶から辿ったとしても、他にもあった良いシーン、悪いシーンが取りこぼされる可能性が高いです。そういった課題を克服するにはITの力が必要で、こういったアプリを使えば試合を見ながらタグを付けることで確実に残すことができ、且つメモを取るよりも素早く映像で確認することができます。良いシーン、悪いシーンの選定は主観的なものですが、主観を確実に残すのと曖昧な記憶に頼るのとでは意味が違ってきます。

課題

過去と比較すると簡単になってきたデータの取得ですがもちろん課題もあります。これまでのブログ記事でも触れていますが、サッカーのデータ化における一番の問題はやはり人によってプレーの定義が異なる点でしょう。上記のサービスは学校などでも使われているかと思いますが、大人数で作業を回していけばそれだけズレる可能性が高くなります。「トランジション」という言葉の意味を理解しイメージできたとしても、90分行われるサッカーの試合から細かくそこを抜き出した時に果たして一致するのか、という点ですね。1チーム内で作業者が1人だった場合はズレる可能性は減りますが、もし次のシーズンに人が代わったりすると、前年度との比較が難しくなったりします。

これらを回避させるのは大変ですが、まずはこういったアプリを使用する組織が一個人に頼らない分析体制を作る必要があります。また、大人数で行う場合は一緒に1つの試合を見て、「あのシーンはあのタグに統一」というような意識の共有をすると改善される部分もあるでしょう。

ネットワークやデバイスの進化によりますます発展をしているスポーツのデータ界ですが、今後は画像・動画解析を利用したサービスがさらに増え一般的になってくると思います。今回課題に挙げた点も数年以内にはクリアになっていくかもしれませんね。

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